2012年12月31日月曜日

年の暮れ、飲んだものいろいろ

年の瀬もおしせまり、クリスマス休暇前に、色々と入荷して試飲したり、配達にきた生産者さんが試飲させてくれたり、また、自身のワインでなくても一緒に飲んでくれたり、はたまたパリに遊びに来たついででお店に寄ってくれた生産者さんと一緒に飲んだり、そこへ店主の友達や常連のお客さんが加わって飲んだり…と、お店で飲む機会がいつもより多かったなあ…という12月。
色々飲んだものの覚え書きです。

まずはClaude Courtois "Racines" 2007(クロード・クルトワ「ラシーヌ」2007年)。
ワイン生産地域としては無名のソローニュで自然派ワインをつくってきたクロード・クルトワ。彼の最も有名なキュヴェがこの「ラシーヌ」。品種は数種類ブレンドされていて、えーと、ちゃんと覚えてない…。赤です。
2007年は、わりと軽く、エレガントさがそなわっている感じ。鳥系ジビエの料理に合いそう。
開けた翌日、ちょっと残っていたので味見してみたら、まだ飲めるし、胡椒っぽいスパイシーさが強調されて、もう少しタンニンがしっかり出てきていました。抜栓してからゆっくり時間をかけて飲むと楽しいかも。

もう一本、Claude Courtois "Evidence" 2007(クロード・クルトワ「エヴィダンス」2007年)。
こちらはかなり熟したぶどうでつくられた白ワインで、どっしり、でもフルーティ。すっごく甘いのかな?と思ったらそういうわけでもない。小さい瓶なのですぐなくなってしまう〜。このままで飲めてしまいますし、香りの強いチーズなどにも合いそう。

クロードが配達に来たとき、うちの店主とランチの約束をしていたらしく、私もご一緒させてもらいました。
近所のビストロで、シェフもクロードと仲良しなので「これはどう?」「こっちは?」と次々秘蔵ワインを出してきてくれたのですが、全員を納得させられそうなものに当たらず…結局、あれでもないこれでもないとやって、みんなが「美味しい!」となったのがこちら。
Jean-Yves Péron "Vers la Maison Rouge" 2007(ジャン=イヴ・ペロン「ヴェール・メゾン・ルージュ」2007年)。
私の大好きなやつ!店主がワインリストを見ていてこれに目をとめたとき、内心「それだ、それ〜!それ注文して〜!」と念じていました。
お店にまだ2008年の在庫があって、夏休み前に飲んでその美味しさに感動ものだったのですが(というか、自分の好みに合うという話で、他の人が美味しいと感じるかはわかりませんが)、ミネラルな味わいはほぼ同じながら、2007年はもっとさらっとしていて少し軽め。私は2008年の方が好みかなあと感じましたが、店主は2007年の方がすっきりしていて良いとの意見。

別の日、お友達に待ち合わせ場所に指定されたとかでご来店された日本人女性とお話ししていたら、なんとオーヴェルニュでワインをつくっていらっしゃる方でした。
生産数が非常に少ないため、もうほとんど手元に残っていないそうですが、 そんな数少ない在庫の中からお友達とランチに飲もうと思って持ってこられた一本を、なんと飲ませてくれちゃいました!
Mito Inoue "Mito-logie" 2011(ミト・イノウエ「ミト・ロジー」2011年)。
ガメイ100%の赤ワイン。オーヴェルニュのガメイというと、旧火山地帯でミネラルいっぱいという先入観があったのですが、こちらはミネラルよりも果実味が出ていて、小粒なレッド・フルーツのようなきれいな酸、それでいてまるみもあり。清らかで美しいワインでした。

同じ日に、たまたま別の生産者さんがお友達と店主を訪ねて遊びにきていて、生産者同士偶然の再会…から、店の奥で飲み会に発展。しかも、パリ在住のお友達がわざわざ自分のカーヴにワインを探しに行って、閉店後に飲み会が続いたのでした。
その人が持ってきてくれたのが、Jean-Marc Brignot "La Combe"(ジャン=マルク・ブリニョ「ラ・コンブ」)。ヴィンテージは…うう、わからないっ。
品種は多分サヴァニアン。ジュラ地方独特のイエロー・ワインに通じる辛口白ワイン。
ジャン=マルク・ブリニョはジュラでのワイン造りをやめて日本に行ってしまったそうだけど、今後また彼のワインが飲める機会があるかなあ…。在庫のあるものはめちゃ高くて手が出ないし☆

さて、こちらはスペースの関係でまだ店頭に出ていない、味見で開けたNicolas Carmarans "L'olto" 2011(ニコラ・カルマラン「ロルト」2011年)。
ワイン生産地としての区分でいうとフランス南西部、その中でも東よりのアヴェロンという地域のワインです。フェール・サルヴァドゥールという品種。
この地域のワイン、特にこのローカル品種はマイナーなのですが、私は結構好きです。一緒にこれを飲んだ人が「カベルネ・フラン?」と言っていましたが、私も最初、この品種のことを知らなかったときはそう思いました。カベルネ・フラン特有のピーマンのような、胡椒がかったような香りがします。造り手やテロワールによって違うと思うので、一概には言えませんが、フェール・サルヴァドールの方がカベルネ・フランよりもタンニンが少ない印象があります。
このワインは、甘みも感じられつつ酸がしっかりあってバランス良い味わい。
日本で言えば「へのへのもへじ」みたいなラベルが可愛い!

もう一本、飲み会状態になったとき、ある生産者さんと一部で有名なワインの話になり、それへのオマージュとして「これ飲もう!」と、お店のワインを買って開けてくれたのがこれ。
Audrey et Christian Binner "Pinot Noir" 2010(オードリー・エ・クリスチャン・ビネール「ピノ・ノワール」2010年)。
ピノ・ノワールといえば多くはブルゴーニュなので価格が跳ね上がるし、美味しいピノ・ノワールのワインにめぐりあったことの少ない私にとっては、このアルザス・ワインに大変惹かれました。で、早速一本自分で買いました。
軽めだけど、ミネラルがありダシのような味わい深さがあるワイン。ガラス栓で、日本酒の栓みたいに、開けたあともフタできるのが便利。で、飲みきらなくて栓をして翌日までおいておきましたが、翌日もバッチリおいしかったです。
また飲みたいなーと思ったけれど、残念ながらこれがうちのお店で最後の一本だったみたい。もっと早く知っていればよかった…。

というわけで、いろいろ飲めて、なかなか幸運な年の暮れでした。
来年も素敵なワインにたくさん出会えると良いな。

みなさんも良いお年を!

2012年12月25日火曜日

クリスマス・イヴのディナー、甘口ワインとシャンパーニュ

フランスでは、12月も半ばを過ぎると、いよいよ本格的にクリスマスの準備が始まります。街中のところどころにイルミネーションが飾られ、窓際にサンタの人形などをデコレーションしているアパートもたくさんあって、クリスマスを待つ楽しい雰囲気いっぱい。

フランスは元来カトリックの国なので、クリスマス(フランス語では「ノエル」)は大事なイベント。クリスマス・イヴのディナーには集まった家族でテーブルを囲みます。
私はフランス人家庭のイヴのディナーに招待されたことがないのですが(今までクリスマス時期は仕事を休めず、夫の実家まで行けたためしがない)、一般的には、前菜に生牡蠣やスモーク・サーモン、またはフォワ・グラなど、メインには去勢していない大きな雄鶏やホロホロ鳥などの鳥系ロースト、その後にチーズ、デザートにビュッシュ・ド・ノエル…というのが定番コースのようです。

そして、そんな特別ディナーにはコースのそれぞれに合ったワインを一種類ずつ選びます。
お店でワインをおすすめするとき、食事の内容をお伺いしてそれに合うものを選ぶのですが、クリスマス前は、イヴのディナー用に普段とちょっと違ったワインをお求めになられることが多いので、こちらにとってもなかなか面白い時期です。

特に、普段はおすすめすることが少ないのにこの時期によく出るのが、甘口ワイン。

王道として、フォワ・グラには白の甘口ワインと言われています。中でもボルドーの貴腐ワイン、ソーテルヌが有名ですが、その他にはジュランソンやアルザス地方のヴァンダンジュ・タルデイヴ(遅摘みの超ブドウで作られる甘口ワイン)、ヴァン・ドゥー・ナチュレル(ワイン醸造中に度数の高いアルコールを投入して発酵を途中で止め、ブドウの糖分を残した甘口ワイン)や香り高いミュスカなどもあります。
でも、「甘いワインは嫌いだから、辛口でフォワ・グラに合うものが欲しい」と言う人も結構います。赤だったら、タンニンがたっぷりのフランス南西地方の濃いワイン(マディランやカオール)を合わせるのも良いでしょう。

また、デザートにもやはり甘口ワイン。特にチョコレート系のデザートは、カカオの渋みもあるので、赤の甘口ワインがおすすめです。赤の甘口ワインは種類が限られてしまいますが、フランスでは、ルシヨン地方のスペイン国境に近いバニュルス、リヴサルト、モリー、南ローヌ地方のラストーといった地域のものがあります。

そして、やはり欠かせないのがシャンパーニュ。「お祝いごと=シャンパーニュ」というイメージがありますが、やはり泡ものは「はじける気分」にぴったりというか、華やかな雰囲気を添え、気分が盛り上がりますよね。

うちのお店にも、クリスマスと年越しのパーティーに向け、シャンパーニュがたくさん入荷しました。
小規模生産者のコント・ユーグ・ド・ラ・ブルドネのシャンパーニュも、通常はお店においていない上級キュヴェやマグナム(1,5リットルの大瓶)が入荷。生産者さん自ら配達にこられ、特別キュヴェのブラン・ド・ノワールを飲ませてくれました!


ブラン・ド・ノワールとは、赤品種のブドウ(ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)からつくられたシャンパーニュのこと。対してブラン・ド・ブランとは、白品種(シャルドネ)だけでつくられたものです。
そして、これはノン・ドゼ。大部分のシャンパーニュでは、最後にリキュールを加えて酸っぱさを調整しますが、ノン・ドゼとはそのリキュールを加えていないものです。なので、後口もさっぱりすっきりした仕上がり。

試飲を始めたところにたまたま店主の友達が何人か来店し、わいわいとミニ宴会状態となり、生産者さんがもう一本、グランド・レゼルヴも開けてくれました!

飲み比べてみると面白い。

「シャンパーニュ」と一口に言っても、ピンからキリまであり、多種多様。
私は特別にシャンパーニュが好きというわけではなく…というか、逆に、リキュールを加えたものは後味がべたつくことがあり、シャンパーニュはあまり好きではありません。(値段のことは言わずもがな…。)
でも、リキュールを加えたり加えなかったり、ヴィンテージの違うワインをブレンドしたり…と作り方が特殊なシャンパーニュ、なかなか奥が深いのかもしれません。

2012年12月13日木曜日

今日のワイン:Frédéric Rivaton "Rage Against the Machine" 2011

先頃入荷して気になっていたワイン。
ルシヨン地方ラトゥール・ド・フランスのフレデリック・リヴァトン「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」2011年。
品種はマカブーと…あと不明。

うーん、同名のバンドがありますね。10年以上前にCDを買ったことがあるのを思い出しました。当時はあまり内容を気にせず(英語わからないし)、音だけ聞いて購入したのですが、リヴァトンのワインの名前を見てはっとした。
そーか、そうなのだ、we have a rage against the machine!

でも、店主と試飲してみたら、今はちょっとバランスがいまいちなので、しばらくお蔵入りです…。
It is not on sale for the moment in our shop.

2012年12月11日火曜日

今日のワイン:Le Temps des cerises (Axel Prüfer) "La peur du rouge" 2011

「今日のワイン」というか、最近気に入っているワイン。

ルシヨン地方の生産者、アクセル・プリュフェールの「ラ・プール・ドュ・ルージュ」2011年。泡ものです。
シャルドネ100%。最初はビールっぽい穀物系の辛口な印象なのですが、ワイン自体にはまるみもあります。そして、うーん、ミネラル感のせいなのかな、ものすごーく後を引く(やめられなくなる)のです!

2011年は、このスパークリングにまわした分と、同じ名前でスティルにまわした分があります。
…って、この写真では、瓶の色が違うだけで、
あんまり内容の違いがわかりませんね…。
こちらはだいぶ甘みを感じます。発泡しなかった分、糖分が残っているのかな。

さて、余談。
ドメーヌ名は「ル・タン・デ・スリーズ」といいますが、同名のシャンソンがあるので、なんとなく聞いたことがあるという人もいるかもしれません。日本語タイトルだと「さくらんぼの実る頃」。宮崎駿監督の映画「紅の豚」の中で加藤登紀子さんが歌っています。もとは恋心の歌ですが、パリ・コミューンの時代に弾圧批判として市民の間でよく歌われたのだそうです。(「血の一週間」と呼ばれる特に弾圧のひどかった時期がさくらんぼの実る頃であったこと、歌詞に「開いた傷口」「血」に「落ちる」「さくらんぼ」の「思い出」など弾圧を彷彿とさせる部分があったことなどがその理由だそうです。)
そして、このドメーヌのワインの名前、なにげに政治色が表れている?今回の「ラ・プール・ドュ・ルージュ」とは「赤への恐れ」という意味で、なるほど白ワインなわけですが、冷戦時代の「赤狩り」の意味でもあります。その他、赤ワインで「アヴァンティ・ポポロ(Avanti Popolo)」というのもあって(これもおいしいです)、これは「民衆よ、前へ」という意味で、「赤旗」というイタリア語の革命の歌の最初に出てくる言葉のようです。
生産者のアクセル・ピリュフェールとは、じっくりお話したことはありませんが、試飲会で会った感じでは、わりとおっとりとした雰囲気の人だったので、改めてワインの名前のことを考えると、意外な感じ…。でもそういう気概のある人なのでしょう。私はそういう人、好きです。ワインも、今年テイスティングしたものは個人的には全部好きでした。お気に入りドメーヌがまたひとつ増えました。

2012年12月7日金曜日

今日のワイン:Cathy et Jean-Luc Gauthier "Biojô Nouvo 2009"

話題が遅れてるなと思いつつも、ボジョレ・ヌーヴォー続きで。

地下倉庫に置いてあって「なんだろー、売り逃したのかなー」とこわごわ触らずにいた2009年(3年前!)のボジョレ・ヌーヴォー。今年の5月か6月くらいに、店主が一度開けてみて、香りをとったらむせたので「?」と思いつつ笑ってしまった。でも、実際、私もむせました…。炭酸ガスが鼻から入ってしまってね。この炭酸ガスは再発酵からきたものではないかと思うのですが、まだまだフレッシュな果実味も残っていて、なんだか特異なボジョレ・ヌーヴォーであることに間違いなし。

そして、その試飲後、売り場に出なかったのでどうするのかと思っていたら、つい先日、店主が「2本だけ店頭販売する」と地下から出して来ました。「お客様にはカラフするように言って」と注意を促されました。まあ、それは当然ですかね。あれだけ炭酸ガスがあればね…。

これ、実は、先日飲んだエリーズ・ブリニョのお兄さん、ジャン=マルク・ブリニョがワイン造りを担当したらしい。
ジャン=マルク・ブリニョのファンの夫に「興味ある?」と聞いてみたら「もちろん!」と即買い。

店主によると、リリース当時は非常に還元的な状態(酸化の反対で、酸素とのコンタクトからほど遠い状況、それにより独特な香りがよく出てくる)で簡単には飲めたものではなかったそう。
それで一旦お蔵入りだったのかーと納得。

今でもワイン自体はかなりの炭酸ガスに保存されている状態。抜栓直後は、多少アグレッシブな雰囲気さえありました。多分残っていた糖分をもとに再発酵したと思われ、かなり辛口。でも、段々とひらいてくると、小粒な赤い果実の風味もあって、タンニンもしっかりあって、嫌いじゃない。っていうか、美味しい。凛とした酸も一貫していて。
でもやっぱりどこか不思議なワイン。個性的とはこういうことなのでしょうか。

で、結局、2本目も購入。
って、日の目をみた2本の2本とも、私が買ってしまった…。
店主にはわざわざ言ってないけど、言ったら笑われるだろうな〜。いや、もしかしたら「あーそうなんだ、わかる」と納得されるかも?

できれば、もう一回飲んでみたい!